ワークショップ:プロジェクトアドベンチャー

ファシリテーター:難波克己(キャット)+門田卓史(モンディー)


●アドベンチャーとは何か?
開口一番、「プロジェクトアドベンチャー(PA)は冒険と思われているけど、教室の中でもできるんですよ」と語り始める難波さん。PAでは、エンカウンターグループのような少人数のグループワークを行い、人間関係を築いていくための様々なアクティビティが開発されている。
さらに難波さんは続ける。「私の目的は世界平和なんです。実は国連の機関にもこの仕事でお手伝いしています。人間関係を作っていくことが私の仕事です。アドベンチャー教育とは新しい自分を迎えること、成長することを目標にしています。体験から学んでいくのが中心ですが、それを『険しく難しく』ではなく『楽しく』行っていきます」
参加者に対して、難波さんは「アドベンチャーという言葉から何を思い浮かべますか?」と投げかける。出てきた言葉は、「冒険」「ワクワク」「危険」「発見」「インディ・ジョーンズ」「勇気」「トライ」 「ドキドキ」「挑戦」「旅」「未知」「成長」.....などなど。
もしアドベンチャーを「人生」という言葉に置き換えたとしても、これは同じかもしれないのでは、と難波さんが促す。「生きること自体がアドベンチャー」というのが、PAの考え方の基本にあるようだ。
「地球規模で言うとアフリカの人たちではマズローの要求段階の一番下のところでもクリアできていないでしょ。実は、それぞれの生活の中でアドベンチャーがあるのです。」
(参考:アメリカの心理学者、アブラハム・マズロー(1908〜1970)は、人間の欲求が底辺の「生理的欲求」から「安全の欲求」「親和の欲求」「自我の欲求」そして最上位の「自己実現の欲求」まで、5段階のピラミッドのようになっており、1段階目の欲求が満たされると,さらに1段階上の欲求を志すと考えた)
「さて、指を出して目の上で右回りに回してください」と、難波さんは参加者に向かって語りかける。「それをだんだん下げていくとどうでしょうか? おなかのあたりまで下げて上から見ると左回りになっていますね! 視点が変わったのです。今日の目標は、この『視点を変えること』なんです」ごく簡単なアクティビティだけで、意図を的確に伝えた難波さんによるワークがいよいよスタートした。
●小物を使って参加者の心をつかむ
難波さんのワークでは、心臓・手・耳などの模型を使って比喩的に「心が痛んでいる様子」や「聴いてくれない姿」などを伝えたり、笑いながらもファシリテーターが参加者に対して伝えたいことがよくわかるように配慮されていた。中学生・高校生など、アクティビティに積極的にのってこないときにはこういった手法も有効であることが説明されていた。以下、この日のワークで行われたアクティビティを順に紹介していこう。
1:ヤートロープ(ロープサークル)
参加者は円形に立ったまま集まる。登山用のテープを円形に結んだものを持ってそれを支えにしながら一斉に座る。バランスが大切! 次は一斉に立ち上がる。全員の力がテープにかかるので、誰かがバランスを崩すと円形が壊れてしまう。
2:ヤートサークル
次はロープではなく手をつないで円形に集まり、奇数の人が内側に偶数の人が外側に傾く。ファシリテーターが合図をしたときに傾けるが個々の体重差や微妙なバランスが難しい。
3:ちょっとしたこと教えてください(タイニーティーチ)
2人組になって自分の得意技や最近はやりの「へ〜」と言うものを教えあう。全員で円形になり相手に教えて頂いたことを発表して呼ばれたい名前も公表する。
4:指フェンシングと人間機関車
体を温めるために行われた。2人組で直線上にフェンシングの姿勢で向かい合って片手を握りあい、握って手の指で相手の太ももを攻撃する。結構動きがあって楽しい。
5:オールキャッチ
全員で円になり、各自が持ったボールを一斉に上に投げ、いくつ受けとれるかに挑戦する。はじめは全員でとってみるが、次にバリエーションで代表3人が円の中心に入りいくつとれるかに挑戦する。3人が協力するとボールは飛躍的にキャッチできるようになる。協力と相談が必要なアクティビティー。もしもファシリテーターが全部を教えたら参加者に学びはあるだろうか?主体的にチャレンジできるだろうか? 学びがどういうことかを体験するためにこのアクティビティーを使ったようだ。
6:コンフォートゾーンについて(自分の居場所)
3つの円を描く。真ん中が居心地の良い場所(コンフォートゾーン)、その外側が少し無理をしなくてはいけない場所(ストレッチゾーン)、そして一番外側はパニックゾーン(危険な場所)として設定する。参加者に、たとえば「水泳をすること」「車を運転すること」などの質問を出して、チョットした自己開示を促していく。
● 信頼、空気、バランス、安全と調和....
7:ミラーストレッチ(バリエーションもあり)
2人組になってお互いに向き合い、一人が鏡になり、相手のまねをする。大きな動きをすることでストレッチ効果もある。役割を入れ替えたり、途中から主導権を握ったりすることで二人の呼吸がだんだん合ってくる。次に相手と手を合わせて行うと手の微妙な動きを感じる。リーダーシップとフォロワーシップも学ぶことが出来る。ギブアンドテークの関係、相互依存の関係を体験する。この辺りから、会場は笑いも多くなり、参加者はかなり打ち解けてきた。
8:ネームトス
自分の呼ばれたい名前を参加者に知ってもらう。円形になってまず、両隣の人の名前を覚える。リズムをつけて順番にニックネームを呼びながら一周して名前を公表する。今度は並び順を変えて名前を呼び合う。いくつかのバリエーションで変化を持たせる。「グループや参加者の名前を覚えることは人間関係を作る上で大切なこと」と難波さん。
9:ルックダウン・ルックアップ・キャッチ
円形になり、「ルックダウン」で全員下を向き、「ルックアップ」で上を向き、「キャッチ」の合図で自分の決めた人の目を見る。目があったらお互いに握手して円の外へ。これを繰り返す。円の外でもまた同じように「キャッチ」を行う。一瞬で見つめ合うことで親近感がわく。自然に微笑みが生まれてくる。
ここで体育館から野外の広場に移動する。移動の際も、難波さんが「今までのところをふりかえりながら」と促し、2人組で広場へ向かう。
10:ワムサムサム
「平和のために」披露すると難波さんが紹介した歌と踊り。
11:コンパスウオーク
自分の方向性についてのアクティビティ。2人組になって広場の中で自分の決めた目印に向かって目をつぶって進む、ペアの人は横で見守るだけ。危険なときだけ声をかけるようにと難波さんが注意する。「人間関係も、練習しなければできない。何をどう練習するか、失敗もおそれないことが大切」。
そして、2人組でストレッチをしながらグループで大切にしたいことを話しあう。ストレッチの後に二人で話し合ったことが発表される。信頼、空気、バランス、楽しむこと、安全と調和、受け入れる、といったキーワードが出てきた。そして、難波さんからは「いま発表したことを、これからの活動の行動に表してください」との言葉が投げかけられる。
続いて、3つのグループに分かれ、「ローエレメントコース」と呼ばれる体験へと移った。ローエレメントを体験しているときに参加者が感じたことがたくさんの学びになったようだ。参加者の中からは「ファシリテーターの存在がなくなった」という感想も出てきた。それは、グループの参加者が主体的に活動し始め、ファシリテーターが必要なくなったからなのかもしれない。しかし、ローエレメントに来るまでにグループを育てていくファシリテーターの能力や視点は、このワークに関わった人であれば確実に感じていただろう。
最後に、難波さんから「今日のふりかえりは、写真に残すとしたらどんな場面ですか?今の活動を新聞の一面にするとどんなタイトルになるか、考えてみましょう」という提案がなされ、参加者から自分が感じた場面の言葉と体験が発表。これがワーク全体のふりかえりとなった。

(レポート:高森茂範)