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2006年11月21日

ゲストインタビューその4・志賀誠治さん

ひろしま.jpg
「子ども長期自然体験村ひろしま」のベースとなる、広島県中山間地、豊平町共盛地区にある旧酒森小学校。
(11/22発行メールマガジン 06-vol.11と同内容)

環境教育プログラムを人間科学という視点で数多く手掛け、幅広いネットワークをお持ちの志賀誠治さん。
広島を拠点に、中四国を中心にご活躍されています。

「子ども長期自然体験村ひろしま」は、夏の15日間にわたるキャンプ。ここで行われていることは、参加者やスタッフだけでなく、受けいれる地域や行政などさまざまな思いをつなぎ、すりあわせようとしている試みで、今年の夏8回目を迎えました。

私たちの探訪は、キャンプの実施中にはかないませんでしたが、広島にお訪ねした志賀さんのプロデューサー的なかかわりを大人のありかたとしてご紹介したいと、今回のフォーラムにお招きすることにしました。

 志賀さんの詳しいプロフィールは→こちらから

 

●コミュニティづくりのプロデュース

--志賀さんは、環境・福祉・健康などをテーマに年間200回もの研修やワークショップをおこなっておられます。また、数々の環境教育プログラムの企画・運営に携わっておられますね。

志賀 子どもパークレンジャーなど、行政の事業や企業の環境基金に関する協力依頼については、プログラムを立てて、ディレクターをアテンドし、プロジェクトを任せるようにしています。

今年8回目を迎えた「子ども長期自然体験村ひろしま(15日間キャンプ)」は、11年前の1996年に広島ホームテレビと協力して、豊平町共盛地区で「地球派塾」という自然学校を開校したことから今に至っていますが、当初コーディネーターとして関わり、現在は「地球派塾」の顧問です。


--プロデューサー的なかかわりも多くなっているのですね。ご経歴は?

志賀 高校生のときから興味を持っていた心理学・教育学を大学の教育学部で学びました。
大学3年のときに障害児のためのボランティアを経験したことなどから、養護学校の臨時職員で10ヶ月ほど働いたこともあります。卒業するときは、高校の歴史の教員に採用が決まっていたんですが、先輩から誘われて、(財)広島県環境保健協会(当時、(社)広島県地区衛生組織連合会)に入社し、1980年から15年間、衛生教育センターに勤務しました。この間にカウンセリングルームを開設したり、心身医学の視点で医療関係者や教育関係者を中心とした市民活動をネットワークしたり、環境保全活動などを手掛けました。


--プログラムデザインにとって、地域をどういうふうにとらえていますか?

志賀 ポテンシャルを分析する必要がありますね。特に中山間地域では、過疎高齢化が進んで住んでいる地域に自信が持てなくなっているケースが見られます。ですから、逆に地域の良いとこ探しというか、眠っている宝を発掘してそれを最大限に活用することで住んでいる人に自信がつくような視点が大事だと思います。


●人を育てるという視点

--「地球派塾」の運営にいたる経緯をお話しいただけますか?

志賀 広島ホームテレビという地方局が実施している地球派宣言キャンペーンのプランニングにかかわりました。このキャンペーンは地域発ということにこだわって環境に関するメッセージを発信していくものでした。そこで、県内にごく普通にある中山間地を舞台にして、そこに残っている循環型の生活スタイルを伝えていこうと自然学校をつくりました。都会から離れた中山間地での環境教育活動に取り組むことに決めた時、3年間で地元にノウハウを落とすことを考えました。4年目以降は、地元のカジカの会という地域活性化の会が運営の中心となっています。
子ども長期自然体験村ひろしま実行委員会という組織が、子どもゆめ基金の助成を受けて運営にあたっています。私は実行委員のひとりです。

キャンプ地になっている豊平町共盛地区旧酒森小学校は、昭和46年に廃校になった小学校で、ふだんは老人集会所として使われています。廃校になったときの卒業生が24人だったことから、24人の子どもが参加するキャンプ、というストーリーになりました。


--対象年齢やプログラムのポイントは?

志賀 小学4年から中3までが参加できるんですが、今年は120人の応募から抽選で選びました。誰でも参加できます。知的障害のある子どもが参加することもありますが、障害のある子どもだけを対象にしたり、不登校の子どもだけを対象にしたりにすることは考えていません。

「夏の分校2分の1ヶ月 じっくり暮らす、とことん遊ぶ」というコンセプトは、ディレクターを担った若いスタッフが考えたフレーズです。

広島大学教育学部の学生を中心としたボランティアが参加するんですが、来る学生にとっては子どもと関わる実習の場であるわけです。彼らは、子ども達にとって身近な成長モデルであり、キャンプを通して子どもたちはカウンセラーである学生にあこがれ、自分も将来キャンプカウンセラーをめざしたいと思うようになったりします。

キャンプの前半は、地域やスタッフとのかかわりで暮らしの基盤をしっかりつくる(じっくり暮らす)ことを大事にします。朝は早く起きて、グループにわかれ、農業をしに出かけて地域の生活や文化を学びます。午後は自然体験を中心に「とことん遊ぶ」という活動がメインになっています。

プログラムの中盤で、前半と後半の谷間に1泊2日で地域の家庭にホームステイをしてもらうことで、子どももスタッフもいったんフリーにするんです。スタッフには、フリーの2日目、ソロで自分のふりかえりを行ってもらい、それをスタッフ全員にフィードバックしてもらいます。
そして、夕方プログラムにもどるときには、自分の中でモチベーションを作っていくのです。

プログラムの裏では、分校会という生徒会が機能していきます。グループの中学生の中から役員を決めて後半5日間位のプログラムは分校会主導で企画立案して行きます。分校会には、予算も渡してしまいます。大人のスタッフは、前半は集団をある程度引っ張っていきますが、後半は役割が変わり、分校会が運営するキャンプの支援者という立場になります。

私たちの長期キャンプのキーワードは「自治」ということです。キャンプを通じて「自分の頭で考え、自分のことばで語り、自分の体で表現する力」を育てたいと思ってやっています。子どもが主体性をもって自らの意志で動くキャンプにするためには、子どもが試行錯誤しているときに、答えを与えるのではなく、答えを導き出すプロセスを支援するスタッフの力量が必要で、そのためのスタッフトレーニングが重要です。


--キャンプへの親のかかわりはどんな感じですか?

長期キャンプの効果を大学と一緒に調査したことがあります。その結果、家庭に戻った時にキャンプ後3ヶ月でキャンプ効果がほぼなくなっているという結果が出ました。そこで、「キャンプで子どもが変わっても家庭の中が変わっていないと駄目だ」ということになり、2年目から2〜3回プレキャンプというので保護者のキャンプを事前に行ってキャンプの意味や目的を保護者にしっかり体験して理解してもらうような取り組みをしましたが、とてもエネルギーがいります。現在は保護者のキャンプは行っていませんが、キャンプの主催者と保護者がキャンプの目的を共有しておく作業がとても大事だと思っています。


●人間科学としてのアプローチ

--人間科学研究所のベースとなるアプローチは?また、志賀さんが取り入れている「ボディトーク」について教えて下さい。

志賀 人間科学には、理科学的なものから哲学まで広い範囲が包括されるでしょう。私は、行動科学をベースにしています。

ボディトークというのは、心と体のつながりを体験するワークの一つで、体を使ったカウンセリングともいえると思います。20年くらい前に出会いました。心と体のつながりをテーマにしたワークは気功・太極拳・自律訓練法などいろいろありますが、より簡単に行えて、普通の人がわかりやすいと思います。

例えば。。。人の全身には心の地図があるんです。
例えば、便秘という症状のときは下行結腸が固くなっている。これは「あきらめ気味のがまん」がからだの症状となって現れたものです。
長期キャンプでも、1週間も経つと、便秘の子が続出する。それで、でるでる体操(ボディートーク)をやると、快調になる。こんな感じです。


--こころとからだをつなぐのが自然の中での活動であったりするのですね。

志賀 屋外での活動にとりくみ始めたのは、後になってからです。その文脈の一つはカウンセリングです。部屋の中でのカウンセリングでうまくいかないときも、外にでたらうまくいくことがあって、自然の力にかかわることの大きさを感じていました。

もう一つの文脈は、環境学習です。当時担当していた仕事の中で瀬戸内海の環境保全に関わって環境教育の効果を測定したことがあります。排水などの生態系への影響に関する環境学習プログラムなんですが、その学習効力としては、プログラム実施後、コミュニティの排水を検査すると改善がみられるけれども、1年後測定してみると、元にもどってしまうことがわかりました。

このことから、大脳新皮質で学んだことは、そぎおとされていく。人が内発的な部分で変わらないと何も変わらないのでは?と思い、そのためには自然の力を借りることがとても大切だと気づきました。いろいろ有効な事例を探して、キープ協会の取り組みを見つけました。

私たちの長期キャンプは、構成されたキャンプ活動です。明確なキャンプ目的があって、それを実現するために最初は13泊14日で取り組みました。しかし、実際にやってみるとその期間では足りない。そこで、翌年には17泊18日にしたりしたのですが、今度は間延びしてしまい効果が薄い。試行錯誤しながら、最終的に14泊15日という私たちのキャンプの形ができあがり、現状のキャンプとしてはほぼ完成型に近付いた気がしています。

(2006.10.17訪問 記録・編集 森川千鶴)


投稿者 森川千鶴 : 2006年11月21日 22:54

 
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